[PAPER TIGER]:分岐点。

 << オマエが更なる前進を望み、何かを成したいと願うのであれば、共に来い >>
 << 何を言ってるの!? キミはSARFのパイロットなのよ!行っちゃ駄目、これは罠よ! >>
 右前方から低い声が囁きかけるのに重なるように、左前方から叩き付けるような高い声。
 真ん中に挟まれるような形になったMiG-33の機首が、ふらり、と揺れる。迷うように。
 そのまま薄いグレーの戦闘機(エアロコフィン)は上昇して右を向き…そこでくるり、と機首を翻した。
 << …そうか、残念だな >>
 言葉ほどは残念そうでもない声音を背に。

 「全く、冷や冷やさせてくれるな」
 あのまま行っちまうかと思ったぜ、と苦笑する同僚に軽く小突かれながら。
 「…付いてこい、って言われたから」
 冗談なのか本気なのか判然としない顔で、彼はぼそり、と呟く。
 「じゃあ、何で戻ってきたんだよ」
 「そんなの、UPEOの一員として当然の事じゃないの!そもそも言われてついていく、なんてそんな馬鹿な理由…」
 「…………」
 コーヒーを片手に二人のやり取りをしばし眺め…彼は、僅かに首を傾げながら再度口を開いた。
 「………フィーに、怒られた。行くな、って」
 ぶふっ、と隣で盛大にコーヒーを噴いた同僚を放って、彼女は思わず彼の仏頂面を穴が空きそうなほど見返す。
 真正面から彼女の視線を受け止めながらも眉一つ動かさないその顔は、やっぱり冗談なのか本気なのか判然としない。
 「な……っ、何それ!?ホントにそんな事が理由なの!?キミって馬鹿!?」
 「SARFのエース様もフィオナ様には敵わない、と…うん、まあ賢明な判断だと思うぜ俺も」
 「ちょっとエリック、それどういう意味よ!」
 爆笑する同僚と食ってかかる彼女を見比べながら、彼はもう一度、小さく首を傾げた。

UPEO/GRDF分岐。主体性のない主人公。