[SITTING DUCK]:空色のリボン。

 北国の空は色が薄い、ような気がする。
 今日も僕は空を見上げる。あの日空の向こうへ飛び立ったひとたちが、誰でもいい、帰って来やしないかと。
 あれから、結構経ったというのに。
 海を越えて戻ってくる翼はないんだと、頭では判っているというのに。
 『ウチの部隊章は縁起物だからね、お揃いだ。どこまで飛んでいったとしても、ぐるっとまわって必ず帰ってこられるように』
 『補欠だからって遠慮はしないぞ、いつでも使い物になってこその補欠だ、いいな!』
 『よぅヒヨッコ、そろそろまっすぐ飛べるようになったか?』
 ああ、この耳元に、あなたたちの声はこんなにはっきりと蘇るのに。
 もうだれも、ここにはもどらない。
 信じたくない、と僕は首を振る。
 諦めろ、と僕は溜め息をつく。

 そして次はきっと自分だと、僕は密かに戦慄く。

 それでも、もうどこにも逃げ場は無いのだから。
 おさまりの悪い赤毛を束ねる、あのひとがくれた空色のリボンで。
 目を閉じて深く息を吸う、あいつが教えてくれたおまじないを心の中で呟きながら。
 目を見開いて前を見る、みんながそうしていたように。

 逃げる場所がもう無いのなら、前へ進むしかないんだ。

 怖くないわけがない。誰だって分の悪い賭けなんかしたくない。
 それでも、空のカケラを髪に結んで、みんなの遺したカケラを胸に。
 大丈夫。
 僕は、飛べる。


何となくメビウス1は結構最初の頃は弱気な印象があります。
自分が後に英雄と呼ばれるなんか思いもせず、ただひたすらにベストを尽くそうと足掻くような。