[Breaking Arrows]:三本の矢。

 尾翼に青いリボンを飾ったF-15ACTIVEの隣に、同じく青いリボンのF-14D。機首には「02」のステンシル。
 パイロットはいっこ年下のルーキー。後席員はすっかり復帰したオヤジさん。
 つまり一言で言えば、「ねんがんの にばんきを てにいれたぞ!」ってことだ。
 うん、再編でメビウス隊にも(人も機体もまだ足りないから、まずは一人だけとはいえ)追加人員が来るのは知ってたけど。知ってたけど。顔合わせだってしたし、訓練にだって参加したけど。だけど。だけどだけどだけど。
 なんというか…わかってても顔が緩む。
 「うひひひひひひひひひひひひひひ」
 「おーい、大丈夫か」
 「隊長、キモいっす」
 オヤジさんの呆れ声も、新人の失礼な言葉もこの際聞き流す。
 ストーンヘンジ攻略からこの方、むやみやたらと目をつけられてあれこれ厄介な任務を回されそうになったり回されたりしている(とりあえず偵察機を一人で護衛させられたのはまだいいとして、前の取材で男の子と間違われた埋め合わせとか寝言ほざかれて、ゴスでロリな衣装で前線基地慰問させられそうになったのは全身全霊で断った。可愛い服着せりゃいいってもんじゃない)今日この頃、出撃の度によその飛行隊の手を煩わせる事が少しでも減るんだ。ありがたい事この上ない。
 それよりなにより、この追加によって一部で「幽霊部隊」だとか「余り物」だとか言われまくってたメビウス隊が、ちゃんとひとつの飛行隊として認められて機能するための第一歩が踏み出せたってのが、僕としてはもうどうしようもなく嬉しい事なわけで。
 うん、いいなあ、一人じゃないっていいなあ!

 そんな事を思いながらニヤニヤしていた僕の見通しは、甘かった。

 << 人数増えたら無茶も増えるか、そうか、そうきたかー… >>
 << 隊長ー、これ2機でやれって凄ェ無茶くないすかー >>
 << はははははは、やだなあ、君がいなければ僕ひとりでやらされてたんだよこれ絶対ッ!無理に決まってんでしょうがーーーー! >>
 澄み渡った夜空の下、どこまでも広がるように見える氷原を眼下に、エルジア戦闘機に追い掛け回されながら巡航ミサイルを追い掛け回す僕ら。何だこの修羅場。
 うん、まあストーンヘンジを壊されてエルジアがちょっと危機感抱いているだろうってのはわかる。そうなると反攻作戦を本格的に始めた僕らISAFの出鼻をくじくための攻撃をしてくるのも当然の流れで。
 かといって大々的に迎撃するほどの規模でもないから、少数でこっそり接近して叩き落とそうというのもまあ分かる話なんだけど、
 << メビウス2、ミサイル破壊…それだけ司令部では「メビウス1」を頼りにしていると言うことだ、期待に沿えるよう頑張ってくれよ >>
 << …期待通り越して重圧だよ、こりゃー… >>
 スカイアイの言葉に、思わず愚痴だって漏れるってもんだ。
 << っつーか、エラいさん達絶対「これ厄介だからメビウス1にやらせとけ」とか思ってない!? >>
 << ……メビウス1、ミサイル撃墜!…いいじゃないか、信頼されてるって事だろう。とりあえず頑張れメビウス1、負けるなメビウス1!俺は管制官として、そして友として全力でバックアップするぞ! >>
 くそう、絶対面白がってるだろう君。後で覚えとけ。
 << …む、第三波が接近中だ。氷原の亀裂沿いに南下している。1機だけだが様子がおかしい、気を付けろよ >>
 << メビウス1了解。メビウス2、援護よろしく…オヤジさん、いざとなったらフォローしたげて >>
 << おう、まあヒヨコの面倒は慣れちまったからな、任せとけ >>
 << メビウス2、了解…おやっさん、そのヒヨコ呼ばわりはやめてくれないっすか >>
 << うるせえ、お前なんざ2羽めのヒヨコだ…ようやく1羽片付いたと思ったら早速次が来やがって、こちとら養鶏農家じゃないんだぞ >>
 なんだか聞き覚えのあるやりとりに、小さく浮かんだ笑いをこっそり噛み殺して。
 僕は北東へと翼を翻すと、背後で自分を追って綺麗なロールを決めた(正直、僕が初めて実戦に出た時よりもずっと上手いと思う)僚機を引き連れて加速した。


ゲームでもなければ一人でなんか絶対無理だと思うようなミッションが増えてくるS.T.N後 …なので魔女っ娘の負担をちょっとでも減らすため&最終ミッションへの布石として人手を増やしてみたり。
最初はF-15で揃えようと思っていたのだけど、ゲーム内で乗れるF-15はC、アクティブ、ストライクだけ…ストライクだと対地に振りすぎてる感が強く、Cは単座でオヤジさんが乗れないという欠点があるので、ここは手堅く14D。ゲーム中に出るのは14Aだけなのはこの際目をつぶるという事で。