[MEMORY ERROR]:世界が墜落する瞬間。
おおきな、くろいつばさを、見上げている。『わたしのつばさ、あのひとがくれた、わたしのそら!』
はしゃぐ声は、だれのものだろう。
『うそ、うそ!あのひとはわたしをおいてなんかいかない!』
どうしたの?ないているの?
それは、かなしいことなの?
『……あなた、だれ!?どうして、わたしのなかにいるの!?』
真っ白な部屋にうずくまる、ちいさな背中がふりむいた。突然の叫び声。あのこ/わたしの、声。
見慣れたわたし/あのこが、真っ白な部屋の真ん中から、こちらを見上げて叫ぶ。
ここは、何処?
『あなたは…誰なの!?』
何故、そんな事を言う?
ここにいるのは、今目の前で泣きながら叫ぶのは、
「……レナ…?」
突然、自分の輪郭が定かになる。真っ白な部屋の中で、彼女が、自分の襟首を掴んで叫ぶ。
『どうして、私を見てるの!私さえ忘れていた、私の時間を!こんなところにまで入ってきて!』
「…俺、は……そんなつもりじゃ…ただ、黒い、翼が」
大きくて綺麗な、黒い翼。あれで飛ぶというのは、どんなものなんだろう。そう思っただけで。
だから、ただ、触れてみたかっただけなのに。
『あれは私の翼よ、あなたのじゃないわ!』
自分を見据える目に、襟首を掴む手に、敵意が篭る。
反射的に振りほどこうとして、その細い手首に手をかけた。
振りほどくだけ、のはずだった。
『………!!!』
砂のように崩れた己の右手を、眼窩から零れ落ちそうなほど見開いた目で見つめて。
『いやああああああああああああああああああああッ!』
彼女が、絶叫した。
それに揺さぶられるように、白い部屋が震える。壁に亀裂が入り、シャッターで閉ざされた窓が歪む。
「……レナ!」
『やめてえええ!わたしに、さわらないで!わたしを、こわさないでえ!あなた、なに!?なんなの!?』
恐怖に顔を歪める彼女に思わず手を差し伸べ、その手を振り払われる。
振り払った左手までも、触れた場所から崩れ出す。
『たすけて、ディジョン!わたしのなかに、だれかいるよう!』
泣き叫びながら崩れていく彼女、崩れていく部屋。
見る間に見慣れたかたちを失っていく彼女は、ざらざらと零れるかけらを必死に拾い集めながら、天を仰いで、叫ぶ。
『あなた、だれ!?わたし、わたし、むかし、わたし…わたしは、だれ?わたしは、わたし………ああああああああああああああああああ!!!』
そして、全てが崩れ去る。
レナのゲーム中最強電波攻撃。
ただ、主人公には彼女の中を覗き込もうという意図も、彼女の記憶を消すという意図もなさそうな感じではあったな、と。
EDから推測するに、とっくにサブリメーション済みだった(=主人公と近い存在になっていた)レナと同調しちゃっただけ、な印象。