[DEADLINE]:インタビュー・ウィズ・エース。

 『…お休みの日は、外で散歩…はできないんで、映画を観たり、音楽を聴いたりしています……普通、ですよ』
 食堂で流れるドキュメンタリー番組の再放送(レナが出演した回だ)を聞き流しながら。
 「そのうち、エイビスにも取材が来たりしてね」
 ぶっ。
 ごふ。
 何となく彼女が口にした冗談に、向かいの椅子で遅めの昼食をかき込んでいた男二人が同時に噴いた。
 前者はやや予想していたが、後者はちょっと予定外だ。
 「ちょっと、ちゃんとテーブル拭いといてよね」
 「お、おう悪い…ってインタビュー?こいつに?」
 「…………」
 ちょっと涙目になりながら冷めたコーヒーを備え付けの台布巾で拭うエリックの隣で、ポテトサラダとは名ばかりの粉っぽいマッシュポテト(UPEO食堂名物)が気管を直撃したらしいエイビスが無言のままテーブルに突っ伏して痙攣しているのを眺めながら。
 こんな、この先一生拝めるかどうかもあやしいものを見られたのは一生の幸運と言ってもあんま過言じゃないかもしれない。
 フィオナは思わず(不謹慎にも)、そんな事を考えた。
 「ここ数ヶ月でめきめき頭角を現してきたSARFのエース様に是非とも、とか…来てもおかしくないと思わない?」
 「あー、まあ、確かにレナのサイドでそれなりに目立ってはいるけど、な…でもよ、こいつにインタビューとか答えられると思うか?」
 「……………」
 「向こうは、そんなの知った事じゃないでしょ。目立つパイロットがいれば話題になるかも、ってくらいしか考えないんじゃない?」
 「まあ、な。で?どうよ、もしインタビューとか来たら、オマエどうする?」
 「…………………」
 ようやく落ち着いたらしいエリックの問いに、テーブルに突っ伏したままの背中は沈黙したまま。
 「…おーい」
 「…おーい」
 「…………………」
 へんじがない。ただのしかばねのようだ。
 「…………………」
 「…………………」
 「……お、おいフィー、水もらってこい水!」
 「う、うん!」

 「…………とりあえず、いっこネタはできたな」
 「できたわね」
 「定番質問だもんな、『パイロットというのは危険な職業ですが、今までで、最も危険を感じた出来事などはありますか?』って」
 「…『食堂のポテトサラダで窒息死しかけたのが、最も切実に命の危険を感じました』とでも答えろって言うのか」
 「……カッコ悪いな」
 「……カッコ悪いわね」
 「……そう言われても、困る」


たまに出てくるバカ話。ちなみにマッシュポテトでむせ返って臨死体験は筆者の実体験。
…さすがにそこまでバカじゃあないと思いたいですが、「彼」。