[UTOPIAN DREAMS]:イルカに乗って。

 何だか、変だ。
 初めて会った時、そう思った。
 「………」
 格納庫で真っ直ぐにこちらを見上げてくる、薄茶色の目はこちらの奥底まで見透かしてくるかのようで。
 「どう、気に入った?」
 高い足音と一緒に歩み寄ってくるチーフパイロットを振り返って、無言で頷くその姿から、目が離せなかった。
 「R-103はまだNEU(ウチ)でも実戦配備は少ないから、大事に乗ってね。…フィーから聞いてたけど、ほんと上がれば凄いけど下りるのが大変なんだから、アナタときたら」
 苦笑混じりに微笑んで、チーフはぽん、と自分の機首を軽く叩く。
 「まあ、この子たちには従来機よりも高精度のサポートAIが組み込まれてるから、不安だったら手を借りるといいわ」
 もちろん、緊急時にはそんな事は言っていられないけどね、と言いながらも、整備のスタッフから声をかけられた彼女はそのままそちらへと向かってしまい。
 ここにはまた、自分…本日付けでNEUに配備される事になったデルフィナス#3…と、社員証の情報によればつい先日移籍してきたばかりの新人…チーフの話が真実であるならば機体制御が下手くそなパイロットだけ。
 これはもしかして、配備されるなりハズレを掴まされたのかもしれない。
 「………」
 しばらくチーフの背中を見送っていた視線が、つい、とこちらに戻ってくる。
 最初からずっと持っていた違和感の正体に、そこで気が付いた。
 こっちの目(カメラ)を、その中でもアクティブなものを的確に見返してきている。
 『…そんな目をしないでくれ。まあ、隊長(チーフ)の言う通り、どうにも着陸と低速での機体制御は苦手なんだが…』
 声には出さず唇の動きだけで…否、明らかにスフィアを介した圧縮通信でそう言って。
 『今後も善処はするつもりだし、お前にはそのためのサポートも要請したい…できれば、緊急事態にこそ。だから、こうして直に頼んでるんだ』
 あ、この件は内密に頼むぞ、兄弟。隊長に知られたら怒られそうだしな、俺もお前も。
 苦笑交じりに唇の前に指を一本立てて見せるイメージまで添付してきつつ、不審すぎる新人は無表情のまま、小さく一つ頷いた。


ジオペリアそのものは部外秘としても、コフィン制御用のシステム関係はデルフィナスであれこれテストしてそうだな、と。
となると、どっちが[兄/姉]なんだかは判らないけど、まあ主人公とは兄弟みたいなもんでは。