[SOLDIER OF FORTUNE]:ポーカーフェイス。

 ンな事ぁガイダンスでも言われるし社内見取り図でいっくらでも調べられるけどな、と前置きしてから。
 「ここがGRDF(ウチ)の食堂だ、まぁ味は保証する」
 そう言って、新しい職場の新しい同僚は大きな手で目の前の壁を叩いてみせる。
 「食堂そのものは24時間開いてるが、メシが食えるのは0730から2230だから覚えておけよ」
 「ただし、そこのサーバは24時間稼働でブレンドコーヒーとエスプレッソだかなんだかがタダで飲める。あと水な」
 「あー、お前タバコはやるか?やらんなら関係ないが、やる奴はそこのドアの向こうで吸えとのお達しだ」
 四方をあれこれと指差しながら解説する声に、無言で頷いていたのが微妙にお気に召さなかったらしい。
 「おい、人の話聞いてるのか?かーっ、最近の若いのはロクに返事もできねえのかよ」
 「…失礼しました」
 簡潔に謝罪してみたのだが、今度は「可愛げのねえやつだ」と鼻を鳴らされた。
 これは…対応に、困る。
 (……このひと、一体俺にどうしろと…)
 少々どころでなく困惑しつつも、「ディジョンの野郎が『頼む、キース』とか言うから案内してやってるだけだっつーに、何で俺が新入りの面倒なんざ」と上司のモノマネ(やたら似てた)をしながら不満の言葉を呟く横顔をしばらく見上げて。
 彼は、意を決して声をかけた。
 「………ええと、ブライアン先輩?」
 「…キースでいい」
 「……あー…キース先輩…その、お手数をかけましたお詫びとして、昼メシの支払いを俺が持つというのを提案してみますがいかがでしょうか」
 とりあえず懐柔策を試みて、ついでに、彼に可能な限り精一杯にこやかな顔(何せ移籍前に友人から「お前笑顔が足りねえから少し練習しとかないと人間関係上手くいかねーぞ」と忠告を食らった)にも挑戦してみたのだけど。
 「…………………」
 こちらを見下ろして何だか変な顔をした同僚が、こちらをひたすら凝視してくる。ちょっと怖い。
 そのまま1分ほど沈黙が続き…ややあって短く「おう」と答える声を残して。広い背中がくるりとこちらを向くと、すたすたと食券販売機へと歩いて行く。
 「おい新入りサイフ出せ!」という同僚の声に「了解しました」と答え、急いでその後を追いつつ。
 (………とりあえず、作戦成功、かな)
 とりあえず目論見が一応成功したらしい、という現状に、彼は少しだけ安堵した。

 …後日、食堂の防犯カメラ記録で仏頂面の同僚と変な笑顔の自分とが睨み合っていた様子を見る機会に恵まれて。
 彼は「怖かったのはどっちも一緒、というかむしろ自分の不自然きわまりない笑顔のが怖い」という事実にひとり愕然とした。
 (…やっぱエリックが言ってたように練習、しよう)
 そう思ったのか思わなかったのか、その後自室や人気の無い手洗所などで、鏡に向かって何だか変な笑顔を浮かべる彼の姿が目撃されている。

仏頂面VS無表情。AC6のDLC機体に、UPEOタイフーンに続いてゼネラルエンブレム機来ました記念というかなんというか。
とりあえずキース兄貴はあの極上のツンデレっぷりがたまりません。