[POWER FOR LIFE]:あしたのもと。
食堂の片隅で、昼食の乗ったトレーを手にうろつく見慣れた姿を発見して。「あ、いたいた…相席、いい?」
訊ねながら、彼女は返事を待たずにさっさと同僚の座ろうとしていた椅子の向かい側に陣取る。
もっとも、この手の問い掛けに返事が返ってこないのは移籍する前からも一緒なので、否定も肯定もないのだけれど。
「また一緒のチームでやれるみたいね、あたし達」
姉さんも一緒なのは、ちょっとびっくりしたけどね、と言いながら、フォークにパスタを絡めて口に放り込み。
「…………機体はデルフィナス#2だってね。UPEO向けのデチューンしたやつとはやっぱケタ違いっぽいよ…って、どうしたの?」
コフィンの話題となると別人のように食い付いてくるはずの同僚が相槌一つ口にしないのに不審を覚えて顔を上げると。
「…………」
普段から表情に乏しい顔に、珍しく、明らかに何か衝撃を受けた、といった表情を浮かべて。彼は、カレー皿を前に無言で口元を押さえていた。
「どしたの?何かヘンなの入ってた?あ、さては美味しくなかったとか。ハズレ引いちゃったんでしょ」
「………………逆だ。食堂のメシが美味いとは思わなかったから、予想外だった」
口の中のカレーライスをようよう飲み込んで、ぼそり、と答える抑揚のない声は、これまた珍しくトーンがやや上がっている。
「は?」
「…UPEOの食堂の比じゃない。…え、なにこれ美味い、嘘みたいに美味い」
一瞬、言葉の意味を掴み損ね…彼女は呆れ半分、笑い半分の声を上げる。
「やだなあ、あそこのご飯まっずいのは有名じゃない!一体どういう食生活してきたのよ、キミ」
「…………」
彼女の言葉にもお構いなし、といった風情で一心不乱にカレーを片づける作業から、ふと顔を上げ。
そんなにおかしいかな、と口の中に五口目のカレーが残ったままもそもそ答える彼に、
そもそもお行儀悪いわよ、と彼女はその額目がけてびしりと手刀を入れた。
「UPEOのご飯はお役所のマズメシ」と信じて疑わないのですが、ゼネラルやニューコムの食堂はご飯が普通に美味しそうだなと。
なので人生初のご飯がUPEO食堂のマズメシであり、「食堂のご飯=マズメシ」という認識の主人公は移籍したらカルチャーショックを受けるに違いないという妄想。